青森ブランド・チェーン・トーク

千葉玲子 グラフィックデザイナー × 田村余一 パーマカルチャー実践人※

千葉玲子さんと田村余一さん
千葉: 囲炉裏に火が入るといいね。
田村: こういう細い枝は薪ストーブには火持ちが悪くてあまり使えないけど、ちびちび燃えるのがいいんだよ。
 

囲炉裏
千葉玲子
千葉玲子(CHIBA Reiko)
マリリンモンローと同じ6月1日生まれ、青森県青森市出身。「ちょっと毎日が楽しくなる・ちょっと気持ちが豊かになる」デザインを目指す、津軽のお色気デザイナー。ロゴ・ポスター・チラシ・パッケージデザインなど、制作の範囲は多岐に渡る。(公益社団法人 日本グラフィックデザイナー協会/あおもりデザイン協会会員/津軽海峡マグロ女子会(マグ女))
 

田村余一
田村余一(TAMURA Yoichi)
青森県南部町出身。パーマカルチャー実践人※。農人/イラストレーター/デザイナー/映像作家/イベントプランナー/産業用無人ヘリコプターオペレータ/青森城城主/青森勝手旅行山岳部代表/舞踏家などジャンルにとらわれない様々な活動を行う。2016年、「ぼくらがもっと自然体になれるデザインがきっとあるはず」をテーマにYOiCHi.PDF(Permanent Design Fabric)設立。
※「パーマカルチャー」:「permanent+agriculture+culture=永続的な農業&文化」を意味する造語。
千葉玲子さん
田村余一さん
田村余一さんと千葉玲子さん
千葉玲子さん
田村余一さん
千葉玲子さんと田村余一さん

外に出たからこそ見える「青森」

- お二人は青森県で生まれ、県外での生活も経験されていますね。

田村: 俺は三戸郡南部町、旧福地村の出身です。
とにかくお金を稼ぎたい時期があって、半年くらい東京と金沢に行って稼ぎました。
でも、今やあまり金がいらない生活になってしまった(笑)

千葉: 私は青森市出身です。高校を卒業してから、デザインの専門学校に行くために仙台に行きました。卒業後3年間仙台のデザイン事務所に勤めて、青森に帰ってきました。

-青森のいいところはどこだと感じていますか?

田村: 青森のいいところと言えば、スキだらけなのがいいですね。すき間というか、何をやってもいいくらいの空間があります。東京はせまいし、時間に追われるし、あんなに人がいるのに、みんなさびしがってる。3ヶ月くらいで、もう充分と思いました。

千葉: 都会に行くと、モノや情報はたくさんあるけど、コミュニケーションが少ないですよね。青森だと近所のおばちゃんが「おはよう」「おかえり」とか、常に声をかけてくれて、人と人とのつながりを感じます。仙台だと声をかけたら不審者と思われます(笑)

田村: 青森は、適度な自然はあるけど何にもない、何も変わらないって言われる。でも、変わらないってすごくほっとするし、大事だと思うし、そこが最大の魅力かなと思います。だから、やり方を少しおもしろく変えるとか、変わらないことを楽しむというか、普遍性は大事にしたいですね。

青森の暮らしから生まれる「デザイン」

-お二人ともデザインというクリエイティブな仕事をされていますが、毎日の暮らしから得られるものはありますか?

田村: 草とか鳥とか、いろんなものからデザインをもらいます(笑)最初は意識して見ていましたが、今はそれしか見てない。例えば、春なら福寿草が咲いた、どんな風に伸びるのかとか。季節ごとに刺激を受けるものはたくさんあります。ここは五感を研ぎ澄ますには最高の場所ですね。

千葉: 私は、日常でこんなのがあったらいいなとか、こう表現したら楽しいかなと考えますね。それから、仲間や友だちと話しているときに影響を受けることも多いです。ユニークな人が多いから。
私は何かやりたいと思ったとき、自分に足りないものが出来る人を探してみます。例えばねぶた師や津軽塗職人にお願いしたいと思って誰かに聞けば必ずたどり着く。都会ではお金を出せばいろんな人に頼めるだろうけど、青森は人が人を紹介してくれて、つながりをすごく感じますね。できないことはないと思います。

田村: 不可能はないね(笑)この建物をつくるときも、コミュニティのつながりで材料の調達が出来たと思います。世間がせまいとマイナスイメージで捉えられたりするけど、この濃密なコミュニティに助けられています。

青森を知りたい人の必読書「青森原人」

- 「青森原人」の著者であるお二人。「これわかる!」「え、そうなの?!」といった青森のクセ満載の内容に心をゆさぶられました。

千葉: 出版社から青森のことを紹介するという方向性が示されて、具体的な掲載項目は地域ごとに決めてもいいということだったので、田村さんに声をかけ制作しました。
私たちにとっては普通のことが、県外の方にすごく驚かれたことにびっくりしました。方言にしろ、食べ物にしろ、私たちの生活そのままでいいんだという気持ちになりましたね。

田村: この本を作り終えたとき、青森の魅力を再発見したと思いました。勉強になったし、おもしろいと思ったし、誇りにも思ったし。これを読んで、青森って何かおもしろい、と何人かでも思ってくれれば本を出してよかったと思います。出張で青森に来る人も必読です(笑)

千葉: 冬はバスが来ないとか、りんごはもらえるから買ったことがないとか、いろいろありますが(笑)自分たちは、どう生活してきたんだろう、青森ってどういうところなんだろうと考え直すきっかけになりました。

田村: それに、あの本は青森人同士の共感を生むと思います。県内のそれぞれの地域のことも意外とお互い知らなかったのが、そこから理解が広がったりして。

千葉: 青森県というひとつの県だけど、それぞれの地域で違いがありますね。例えば冬の体育は津軽地方だとスキーで南部地方はスケート。地域によって言葉や生活スタイルも違えば食べ物の味付けも違う。ひとつの県でこれだけ違うところは他にないと思います。本当にバラエティに富んでいておもしろい!

- この本をつくるプロセスを通じて、青森のことをじっくり考えられたのですね。

田村: 改めて思うけど、自分は青森で生まれたし、青森で死にたいなと。

千葉: 遊ぶことだけ考えるなら都会は刺激もあっていいかもしれないけど、生きていく、生活していくことを考えると、生まれた土地でもある青森がいいですね。

田村: 東京は消費ばかりで生産してない。全てがあるけど、集まっているだけで、何もない。だから震災で流通がストップすると何日ももたないし、どれだけお金を持っていても生きていけなくなります。
青森はたくさん生産してる。金があってもいいけど、なくても生きていける。湧き水もあれば、近所に漬け物をたくさん漬けているおばちゃんもいる。防災の面でも青森はいいと思います。
この前、東京からとあるデザイナーが、ここに来て、すごく感動していました。「田村さん、これが東京のど真ん中にあったら大金持ちになれますよ」って(笑)
俺は生活全部がデザインだと思っているんですよ。この薪の太さだとストーブに入らないから半分の太さにしなきゃとか、それも含めて全てデザイン。でも、東京から来たデザイナーもそうだけど、そんなに必要じゃないものもデザインして飯を食べてるんですよね。 俺は青森の方が真実だと思っています。

青森の暮らしから見つける「青森ブランド」

- お二人が「青森ブランド」という言葉・考え方からイメージされるのは、どんなことでしょうか?

田村: 「ブランド」というと高級なイメージがあって、うそくさいと感じてしまうところがありますが(笑)
俺にとっては、青森のどこかが部分的にいいんじゃなく全部いいんですよ。雨降っても雪降ってもいいなと思うし、野菜が虫に食われても、この野菜おいしかったんだろうなと思います。もう全てが輝いています。

千葉: 「青森ブランド」という言葉を聞くと何だろうと思うかもしれないけど、この青森にいるからこそ出来ること、出来るつながりがあると思います。それを、みんなで考えたり行動したりすれば絶対どこかにつながるし、協力してくれる人もいる。自分自身が何かやるにしてもたくさんの人に助けられたりアイディアをもらったりしているので、本当に何でも出来る土地だと思っています。

田村: これだけ雪が多い、平均寿命が短い、最低賃金が低いとか言いながらも130万人が青森県に住んでいる、誰かがその土地の魅力を見つけて生きている状況がすてきです。それが輝いて見えるし、ブランドかなと思います。

千葉: 「青森ブランド」って、1つ1つの素材というより、全てなんですよね。
田村さんが言うように、青森はいろいろ生産している土地で、素材はたくさんあって、いかようにでもなる。それに、デザインはいろんな表現ができるので、ネガティブなことでもおもしろおかしくすることで楽しく感じられる、そういう可能性があります。青森の魅力を、デザインを通してうまく伝えていければと思いますね。

- お二人からは、青森を楽しみ、発信しようという気合いが伝わってきます。

千葉: 若い人が都会に出るのはいいと思うんです。人はたくさんのことを経験したい・見たいというのがあるし、出てみると改めて良さもわかるから。ただ、外で何かを得たら青森に戻ってそれを生かしたいと思えるような、私たち大人がそういう生活をしていれば、子どもたちも戻って来たいと思うかもしれないですね。

田村: ここで楽しめない人は都会に行っても楽しめない。この場にあるものに自らの五感で魅力を見つけて楽しむというのはどこに行っても変わらないですから。
青森県の人口は毎年1万人以上減っています。それは生まれる人より死ぬ人が多いことと、青森県に来る人より出る人が多いから。県としては出る人が多いのはよくないんだろうけど、俺は、青森自体に魅力を感じていないのに居座られるのがいやですね。そういう人はがんばっている人の足を引っ張るでしょう。青森いいよね、おもしろいよねって言う人と仕事したいです。でも、どちらかと言えば、様々な人がいて、ごちゃごちゃしてる方がおもしろいかなとも思います。

千葉: 田村さんとは、それぞれの地元を紹介する企画を一緒にしたこともあります。
外から見て、青森県で何かおもしろいことやってる、うらやましいと思うような状態になれば、人も集まってきますよね。

田村: それが我々の仕事。デザインでもそうだし、活動を通して青森っておもしろいよねとか、いいところだねとか、そんなムードを作っていく。

千葉: 人の魅力もありますよね。青森にいる人がやたらいきいきしていると、青森の魅力って何だ?と思われるんじゃないかと。
田村さんみたいな、青森で楽しんで生活している人たちを紹介すると、青森でこんな生き方・生活が出来るとか、可能性が広がると思います。

田村: ガンジーは、この世界を変えたかったら、まず自分が変わらないといけない、と言ったそうです。結局はその人自身が変わらないと何も変わらない。
自分たちが楽しんで発信していかなきゃと思いますね。

千葉玲子さんと田村余一さん
(2016.1.19 青森県南部町 田村余一氏 自給自足的創作フィールド「yamaan」にて)
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