青森ブランド・チェーン・トーク

藤代典子
青森100年ブランド事務所
ブランド・プロデューサー
× 安斉将
イラストレーター

写真:藤代 典子さんと安斉 将さん
藤: 安斉さんには、公私ともにお世話になっていますが、スーツ姿は初めて見ました(笑)
安: スーツはウマジンの時の正装なんです(笑)
写真:藤代 典子さんと安斉 将さん
写真:藤代 典子さん
藤代典子(FUJISHIRO noriko)
青森100年ブランド事務所 ブランド・プロデューサー。徳島県出身。五つ星ホテル「ザ・リッツ・カールトン東京」等にて、マーケティング・マネージャー を務める。2009年ヘルスツーリズム運営会社を東京にて創業後、青森県へ本社移転(震災後、休業)。現在は、八戸学院大学にて「ブランド・マーケ ティング」の講義を担当するほか、青森県の地域資源、特に食材のブランド化に携わる。

 

写真:藤代 典子さんと安斉 将さん
安斉 将(ANZAI masaru)
神奈川県出身。イラストレーター。雑誌、書籍などの印刷媒体の他、映画やCMへの作品提供、ディスプレイ、ライブペインティングなど、活動範囲は多岐に渡る。2011年十和田市現代美術館にて個展開催。八戸工業大学非常勤講師。
写真:藤代 典子さんと安斉 将さん
写真:藤代 典子さん
写真:安斉 将さん
写真:藤代 典子さんと安斉 将さん
写真:ウマジン
写真:ウマジン
写真:藤代 典子さん

青森の生活を選んだ理由

- お二人とも青森県外のご出身で後に青森に移られていますが、なぜ青森を選ばれたのでしょうか?

藤: 私は、滞在することで健康になれるリゾート地を日本のどこかに作りたいと考えていたのですが、青森県出身の大谷真樹・八戸学院大学学長とのご縁もあって、候補地の一つに青森県を考えていました。初めて青森に来たのは2008年の12月上旬でしたが、その日は、その冬の初雪の日でした。青森空港から八甲田を越えて南八甲田まで行きましたが、すばらしい雪景色でした。お店や看板なども全て雪で覆われて真っ白で、全く(日本的な)生活感がないというか、何かスイスとかカナダに来たように感じました。奥入瀬渓流の流れの中にある石にふんわり積もる綿帽子の雪がとってもきれいで、南国育ちの私は、この美しさに魅了されてしまったのです。

安: 私は、妻の実家が青森でしたので、妻と一緒に何度か来ていました。東京ではイラストの仕事をしていましたが、インターネットに繋がっていれば、どこでも仕事ができてしまうような状況になってきたので、どこでも仕事ができるなら東京を出たいという気持ちが次第に大きくなってきました。そんな時、十和田に現代美術館がオープンし、市民を巻き込んだアートによる街づくりを進めるという話を聞いて、とても関心を持ったのがきっかけでした。

藤: 東京の閉塞感、とても共感します。当時、私は仕事に没頭しすぎた結果、体調を崩してしまい、心身ともにギリギリの状況でした。仕事があってこそですが、自分の夢を叶える希望を持てる場所に移り住むのも悪くないと思っていました。閉塞感を打ち破る新しい希望が持てる場所として青森を選んだという意味では、  安斉さんと一緒です。

- お二人にとって十和田は「ここに住んでやってみよう」と思わせる何かがあった場所、という事ですね。

藤: 実は、青森のほかにも、長野や伊豆なども見に行きましたが、一番最初に訪れた青森で出会った雪の景色が忘れられずに、青森を選んだのです。

青森暮らしの魅力

- お二人とも青森県で暮らしはじめてから5年の歳月が経ちますが、現在、青森県や十和田市のどんなところに魅力を感じていますか?

安: 私が十和田に来るきっかけとなったアートによる街おこしに関して言えば、私は十和田の皆さんにとても受け入れてもらっていると感じています。

藤: 東京でも地域おこしや活性化の動きはあるけど、人や活動が多すぎて埋もれてしまうことが多いですよね。その点、こっちにいると、いろんな活動が身近にあって、誘ってもらう機会もたくさんあります。

安: アートを軸にした活動に限定されるけど、イラストを教える機会など、いろいろとお声がけをいただくようになり、段々と活動しやすい環境になってきていると感じます。

藤: 十和田市の開拓の歴史のせいでしょうか。何かをするときに周りが支えてくれる土壌がありますね。

安: そう思います。いろんな活動の効果が、時間をかけてしっかりと浸透して行っている感じです。

藤: 青森には、良い意味でも悪い意味でもスローライフですね。(笑)寒さの厳しい北国での冬時間って、温かいお風呂に浸かって、気心の知れた友人たちと美味しいお酒を楽しみ、ただ時間の流れに身を任せてゆっくり過ごすことなんだ、と教えてくれたのが、歌人・大町桂月さんの「冬籠帖」でした。大正時代の旅エッセイですが、究極のスローライフが描かれていますよ。それから、東京にいたときとは違って、人の付き合い方が丁寧なので、私もできるだけ丁寧にしようと努めています。用事があるときもメールだけで済ますのではなく、電話して直接伝えたり会いに行って話すことが自然に行われていて、そういう丁寧さを見習いたいと思います。

安: 同感です。すごく価値のあることだと思います。

青森にある価値とその磨き上げ方

安: 青森ブランドとの関連で言えば、私にとっての青森の価値は「時間」「自然」「食べ物」「人」です。

藤: 知床や屋久島と違って、割と身近に世界自然遺産がある事の意味は大きいと思います。奥入瀬・十和田や種差海岸などの国立公園も、とてもアクセスしやすい。気軽に行けるところに世界遺産や国立公園などの本物の自然があるのは、青森の人にとっては普通でも、一般的にはスゴイことです。

安: そうですね。首都圏にいると、本物の自然に触れるには、何時間も車に乗って渋滞を抜けて行かないといけない。青森では、普段のちょっとした買い物のドライブでも気持ちよさを味わえる。これは価値のあることだと思います。

藤: 食に関して言うと、魚の圧倒的な新鮮さには本当に驚きました。東京にいた頃も、外食などでおいしいお魚をいただいていましたが、あれは何だったのかと思う位、青森の魚は美味しいと思います。

安: 私もそうでしたが、今ではそれに慣れてしまって困っています(笑)。贅沢ですね。

- 2014年11月に開催した「青森ブランドフォーラム」では、ゲストとしてサッカー元日本代表の中田英寿さんにお越しいただきました。中田さんは、「青森はいいものをたくさん持っている。でも、青森の人達はそれを普通だと思っている。もっと工夫して新たな価値を生み出す努力が必要」というメッセージを発信していました。この中田さんの視点に関連して、お二人が感じられていることがあったら教えて下さい。

藤: 中田さんのメッセージは、「価値の伝え方を工夫しよう」ということだと思います。価値のあるものがこんなに沢山あるのに「こんな何も無いところによく来たね」といった言い方にはがっかりすることがあります。「何も無い」のではなく「自然そのままがある」「素朴さがある」というように、プラスの言い方にするだけで、聞き手にとっては随分と印象が違ってきますよね。

安: 仕事で関わった農家の方と話をしていると、農家の方々は謙虚な方が多いので、良いところをほめると「いやいや、なんもなんも」と否定してしまう事が多いですね。このような事がいろいろな場面でありました。謙虚さを捨てろということではないのですが、アピールの仕方を学んでいくことが必要かな、と思います。

藤: 謙虚さが美徳という感覚は日本人としてわかるのですが、自分にとって美徳かどうかではなく、相手にとってメリットのある情報、相手が喜ぶような言葉に言い換えるという努力をすると、青森に対する見方が変わってきますね。

安: 言葉の微妙な使い方や意識の持ち方で変わってきますね。これは慣れや練習が必要です。私も、仕事の関係でインタビューを受けることがあるんですけど、人に説明するという営みを繰り返す中で、自分はこういうことをしようとしていたんだ、と改めて気付くことがあります。

藤: そういうこと、よくありますよね。

安: 青森ブランドについても同じ事が言えると思うのですが、みんなで「青森ブランドってなんだろう」という問いを何度も考えていくことが重要だと思います。そのプロセスの中で、考え方や価値の共有が進むのだと思います。

青森の「未来を変える」ために

- 今後の取組の予定を教えて下さい。

安: アートを通じて街に何か新しいモノを創り出していくような活動に引き続き取り組みます。その取組の一つ、「ウマジン」は取り組んで4年目になりますが、もともとは秋祭りで震災の義援金集めをするので何か面白い企画がないかという、十和田市の青年会議所からの依頼が始まりでした。十和田市がかつて全国有数の馬産地だったことや南部駒踊りなどの馬にまつわる伝統・文化が残っていることなどからヒントを得て、伝統と革新の融合をコンセプトにデザインしました。
 震災直後に「絆」の大切さが注目されるなかで、人と人、人と地域をつなぐコミュニケーションツールとしてウマジンを活用し、SNSやWEBを通して十和田を世界に発信していることが評価され、2014年、グッドデザイン賞を受賞しました。

藤: 東京のミッドタウンで開催された授賞式では、ウマジンの姿で出席されたようですね。

安: はい。今日のこの姿で授賞式に出てきました。ウマジンの活動は、ふざけているように見えて、実は世界平和を目指しているプロジェクトなのです。ウマジンは、身に付けるだけで、年齢、性別、国籍を問わず誰とでも仲良くなれるコミュニケーションツールなのです。

藤: それを表したのが「ボクノトモダチ」というコンセプトなのですね。

安: 先ほど青森に来た理由のところでも触れましたが、インターネットの普及が私たちに与える影響はとても大きいと感じています。いま、青森ブランドを世界で確立するといっているのも、青森がインターネットを通して世界につながっているという前提があるからです。ローカルは、グローバルを強く志向すればするほど、ローカル自身の価値をしっかり認識しておかなければならなくなると思っています。ローカルは突き詰めれば「個の価値」につながるとの観点から、個人に着目した新たなプロジェクトとして、十和田市の松本茶舗さんでの「松本さんとあそぼう」を始めます。これは、個人や個人商店を舞台に、それぞれの個をつなぐ様々な実験をしてみようと思っています。松本茶舗さんは、とてもおもしろい不思議な空間ですので、是非行ってみてください。

藤: 私は、県外の友人・知人に来てもらって青森を知ってもらうなど、青森の良さを伝える草の根活動を地道に続けていこうと思っています。以前には、お世話になっている雑誌編集長の先輩が運良く青森りんごの本を出版してくださったこともありました。私は、青森に暮らす私たちが普段の生活の中で美味しく食べている県産食材を、全世界の皆さんにも召し上がっていただけるよう、これからも青森発の食の価値を発信していきたいと思っています。また、他地域から青森に来て暮らしている私の視点から青森の暮らしや人の魅力を発信し、人と人をつなぐきっかけ作りをしていきたいと考えています。(FIN)

写真:藤代 典子さんと安斉 将さん
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